フリーランス言語聴覚士はしっ子の、こだわらない話

~北のマチのフリーランス言語聴覚士の医療教育系ブログ~このブログを本にしたい

古きを知り、新しきを知る。

 
【第98回】

古きを知り、新しきを知る。


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いつもこのブログに訪問くださり、
ありがとうございます。



本日のテーマは、

「古きを知り、新しきを知る。」



これは、四字熟語 温故知新の意味です。


温故知新

この言葉、私好きなんです。

古いものから学び、新しいものの姿が見えてくるものがある。



日常物品の進化や、

今、世間を賑わすニュースや情勢もここから見えてくるものがあります。




この温故知新に関しては、
言語聴覚士の現場でも当てはまります。




言語聴覚士の嚥下訓練の現場では、


対象者の好きなもの、
食べたいものを訓練場面に使うことがあります。




私は講演の機会を頂くと、


「あなたの好きな食べ物はなんですか?」

「最期に食べたいものはなんですか?」



と、必ず聞きます。




これ、簡単なようで、
実は難しい、大切な質問です。




食べることを日々、楽しんでいる人にとっては
この質問はわりと簡単です。


いつも、自分の口に入れるものを
その時の気分や体調に合わせて意識しているから。



反対に、



日々の食事をあまり意識していない人だったり、

食べることをあまり楽しめていない人は、



この質問が少し難しいかもしれません。



たかが好きなもの、されど好きな食べ物。




「食」における好きなものには、
その人の心、自分の心を開く鍵があります。




バリバリに疲れた時、
心が枯れはてそうな時、



おいしいものが癒してくれた経験はありませんか?
好きな食べ物を食べて心が回復した経験はありませんか?



私たちは、五感でたくさんのことを感じています。

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、そして味覚。



特に視覚、聴覚、嗅覚は
意識していなくても情報が入ってきて
無意識に感じますが、



味覚に関しては口にいれる意識がないと、
感じられません。



口の中に入ってくる、口に入れるということは、
そのものを「受け入れる」ということ。



そのためには、

その食べものに馴染みがあり、
興味関心があり、好みのものであり、



好感情を持っていないと、
口に入れる受け入れ態勢は整いません。




意外にも、自分の「好きなもの」がわからない人って結構います。


意外に思いますよね。


これ案外、若い人に多い傾向にあります。



そうなると、
「最期に食べたいもの」のイメージにまで、
なかなかたどり着かないんですよね。




そして、

私は講演の場面で、聴講者に若い方がいると
こんな質問もします。



「親の好きな食べものを言えますか?」




ギクッとしませんか?




自分の好きなものならすぐに言えるけど、
親の好きなものとなると、さてなんだろう・・・


と、なりますよね。




実際には、

必ずしも
最期に食べたいもの = 好きなたべものとは

限りません。





昔懐かしいふるさとの味かもしれないし、

一度は食べてみたかったものかもしれないし、

さっぱりとしたお水だけでいい、
ということもあります。




でも、最期に口にしたいものが

好きな食べ物であったり
なじみのある食べ物ということも現場では多くあります。



だから、


自分の好きな食べ物、食べたいものを自覚すること、

家族の好きな食べもの、食べていたものを意識しておくことは、



大切なことです。





いわば、


「自分の食の歴史」

「その方の食の歴史」





好きなものや、なじみのある食べ物、
思い入れのある食べ物は、



自分にとって、その方にとって、



固くなった心の鍵を開くものとなりえるのです。





例えば、
目の前の嚥下障害の対象者の方が、


ふと、「味噌汁が飲みてぇなぁ。」


と、ポツリと言ったとします。



この「味噌汁」といっても、
その家庭によって味も具材も異なるし、

暮らしてきた地域によっても、使うお味噌やだしも異なる。

味噌汁とは言っていても、郷土の三平汁やせんべい汁のことなのかもしれない。



喜ぶだろうと、一生懸命用意しても、



「これじゃねぇんだよなぁ・・・」と
言われてしまうかもしれません(笑)





また、嚥下訓練が行き詰ったとき、


看取りの場合に
楽しみ程度に口に含むものを考えた場合、



「そういえば、おばあちゃんいつもお茶を飲んでいたわ。」



こんな、家族からの情報から
お口に運んでからとてもスムーズに進むこともあります。



これが、流行りのタピオカドリンクでも、
若者に大人気のこってりハンバーガーでも、


きっと、その方の味覚から始まる心の開き
得られないでしょう。



それぐらい、
食の好みと習慣のある食べ物であったかは、
大事な奥深いものです。




これが「食の力」というもの。




食の力、食の歴史侮るなかれ、です。



栄養学的にはほとんど栄養のないものであったとしても、

そのたった一口で、命の灯が再び灯ることがあるのです。



口の力、食の力、
やはり大切にしたいものですね。